ホイダルによると、家具産業が始まったのは1920年代のこと。当時はノルウェーの都市部で多くの失業者が出ていた時期でした。シッキルベンのような小さな村の人々は、自分たちで仕事を作らなければなりませんでした。シッキルベンは、ノルウェーの中でも、ゼロから自分のビジネスを立ち上げるという起業家精神の長い伝統がある地域なのです。


シッキルベンの人々は、都市部に家具に大きなニーズがあることを察知し、次々と会社を設立します。エコーネスの家具職人の技術が優れていたことに加え、ヘンリー・フォードにヒントを得た組み立てラインのような工場設備で、製造工程を早くから合理化していたことが大きな成功のカギとなりました。定型的な仕事であれば、訓練を受けていない従業員でもできるため、コスト削減にもつながったといいます。
マットレスのスプリングからストレスレス®へ
1934年、イェンス・エコーネスはスチールスプリングとマットレスの製造からスタートし、やがて他の家具へと事業を拡大してゆきました。当初、スプリングは天然繊維で包まれ、布で覆われていました。発泡スチロールの発明はこれを大きく変え、製造工程のスピードアップに貢献します。この時代、エコーネスは地元のどのメーカーよりも早く事業を拡大します。戦後、ソファベッドのような省スペースで耐久性のある家具の需要は高かったためです。
さらなる大きな躍進は、ストレスレス®リクライニングチェアから始まりました。60年代、テレビ産業が成長するにつれ、多くの人が長時間、座ってくつろげるリクライニングチェアを求めていました。これに商機を見出したエコーネスは、可能な限り快適なリクライニングチェアの開発に着手。そして1971年、ストレスレス®オリジナルが誕生したのです。
ストレスレス®チェアは、座り心地と機能を融合させた素晴らしいアイデアでした。当時、トップセールスマンだったイェンス・ペッター・エコーネスは、人々に、何か言う前にまずストレスレス®のリクライニングチェアに座って試してみるよう、勧めていたとか。実際に座ってもらえば、今まで座った椅子の中で一番座り心地がいいという意見が多かったとホイダルはいいます。
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